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2008-09

「将来の夢」

作文にはいくつか定番ともいうべきお題があります。そのひとつが「将来の夢」で、『まなびの函 作文添削教室』の「お試し作文」のテーマのひとつとして載せてありますし、通常添削の受講生にもしばしば出題してきました。ところが中学生以上の方にこのお題で書いてもらうと、どうも内容がかんばしくありません。「将来何をしたいのか分からない」というのが典型的な例ですが、中にはいわゆる「中流」のありふれた生活パターンを「夢」として書いた中学生もいました。ありふれていて悪いわけではありませんが、文章全体がどうも夢を語るというテンションではありません。

特に中高生の場合、「将来」「夢」という言葉の辞書的な意味は知っていても、「将来の夢」というお題の意図そのものが分からないのではないか。少数の例から推測するのは乱暴ですが、どうもそんな気さえします。

もっとも大人も大同小異で、ある二十代の方は現在の仕事に忙殺され、それどころではない様子でした。人のことばかりではありません。私が「将来の夢は何かと尋ねられても、やはり「それどころではない」以外には答えられそうにありません。「今の若者には夢が無い」ともうずいぶん以前から言われ続けていますが、夢が無いのは若者ならざる大人の大部分も同様ではないでしょうか。

未来について夢を抱きにくい時代というせいもあるでしょう。半世紀前なら、明日の米の心配をしなくてすむようになりたいなどの明確な夢がありました。しかし今はとりあえず飢えからは開放されて欲望を満たす物もそこそこ持っています。ですがごく一部の力ある者のみを優遇する傾向(いわゆる格差社会)は日増しに強まり、それ以外は労働者としての権利も奪われたり、過密労働や不安定な雇用形体を強いられたりしています。世界全体の中で日本を見ても、かつてのような昇竜の勢いはありません。十代の多くは社会の動きを具体的には把握していませんが、どうも希望にとぼしそうだという大人全体の雰囲気は、存外しっかりとつかんでいます。

将来これをやりたいという具体的な望みが無いまま、やる気をだせ、言われて動くだけでなく自分で考えて行動しろと言われても、原動力自体が乏しいのですから無理な相談というものなのでしょう。目的も不明なまま強要される勉強は苦役でしかなく、溜まったストレスを解消し傷ついたプライドを回復するために、ともすればさらに弱い者を痛めつけようとします。これは散々言い古された論法ですが、事態が変化していないのですから、別の言い方をしても五十歩百歩です。愛国心や公重視という一定の態度の強要は、おそらくこれをさらに悪化させるでしょう。

この社会の流れそのものに問題があるのですが、社会変革もさることながら、各個人レベルでとりあえず何とかしなければなりません。

くり返しになりますが、中学生以上にもなれば、何をするためという目的も見えないまま「やる気」だけを出すのは困難です。将来なりたいものについて、おぼろげでもイメージがつかめれば、そのために今何をしなければならないかも見えてくるでしょう。

ヒントひとつで「将来の夢」が簡単に見つかるわけでもありませんが、まず「何をしているときに、もっとも夢中になるか(充実感を抱くか)」を考えてみてください。「どんなことに一番関心があるか」でもよいでしょう。

それと同時に「今の世の中で、何が一番問題か」も考えてみてください。「世の中」が大きすぎるのであれば、「自分の周囲」に直して考えてください。自分だけを見つめているだけでは、行き詰まってしまいがちだからです。自分ひとりで考えるよりも、できれば親、きょうだい、友人など、あなたをよく知る周囲の人とも話してみてください。さまざまな職業についてネットで調べる方法もありますし、下で紹介しているような職業選択のアドバイス本も各種出ています。

年頃の子供がいる方であれば、上記のことについて子供とじっくり話してはどうでしょうか。お説教ではなく、問いかけるように話すのがポイントです。少なくとも「今勉強しないと後で困るぞ」と漠然とした叱り方をするよりはマシでしょう。「後」とはいつのことか。「困る」とはどのような状況を指しているのか。具体性を欠いた言葉に説得力はありません。

すぐに正解が出せる問題ではありませんし、「将来の夢」を一度決めても後でまったく変わってしまうかもしれません。しかしそれでかまいません。大切なのは、自分の将来について具体的に考え続ける姿勢を身につけることだからです。「まだ中学生だから何をしたいのか分からない」で済ませていては、おそらく高校生、大学生、大人になってもやはり分からないでしょう。これは私自身の反省でもあります。答えを先送りしていては、いつまでたっても何も見えてこないものです。

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