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2008-09

「やる気」を出すために(1)

前回まで3回に分けて、まず無気力について述べました。まとめると、人は次の場合に無気力に陥ります。

1.自分の努力で取り除けない苦痛にさらされ続ける場合。
2.失敗の連続。
3.自律性の感覚が失われる場合。(例:報酬、成績)

無気力の反対を効力感といいます。「努力すれば好ましい変化を成しとげられる」という自信や見通し、という意味です。これによって、人は意欲的にとりくみ、積極的に状況を変えようとします。「やる気」があるとは、効力感を持っている状態といえます。

先に挙げた3つの要因を減らせば、さらに無気力に陥るのをくい止められるでしょう。しかしそれによって、ただちに効力感が獲得される、つまり「やる気」が出るのではありません。

効力感を伸ばすためには、次の3つが大切です。

1.自己決定感(自律性の感覚)
2.交流感
3.有能感


それでは順に説明していきます。

1.自己決定感(自律性の感覚)

自分の行動をコントロールしているのは自分自身である、という感覚を「自己決定感(自律性の感覚)」といいます。自分自身が自分の活動の源泉でありたい、という欲求が人間にはあります。しかし、外部の評価(成績)やそれにもとづくごほうびが導入されると、今度はそれに合わせて行動するため、自己決定感が失われてしまいます。自分が主人公でない活動をするのは楽しくありませんし、活動自体への興味も失われます。成績をつけたりごほうびを与える側は、「やる気」を出してもらうのが目的でしょうが、たいていは逆の結果にしかなりません。

ごほうびがすべて駄目というのではありません。自己評価にもとづいてごほうびが与えられるとき、活動自体への興味の低下は見られません。ごほうびを用意するなら自分自身で決めるようにと別のページで述べたのも、自己決定感を損なわないためです。

自律性の感覚を伸ばすには、多くの選択肢の中から自分で選択できる機会を設けることが重要です。勉強には「やる気」が出なくても、趣味となると夢中になるのは、趣味が基本的に「多くの選択肢の中から自分で選択し続ける行為」だからです。

しかしその選択肢の間に著しい魅力の差があったり、選んでほしい活動ばかり並べた見かけ倒しであっては意味がありません。

A.「モベァイレソ」「ベーウケポニ」「モデル」からひとつ選んで記憶する。
B.「防犯作文」「防災作文」「非行防止作文」からひとつ選んで書く。

Aでは事実上3番目しか選べませんし、Bはどれも似たり寄ったりです。中学生はまずからだを鍛えるべきだという思想を押し付けようと、部活に運動部だけ用意するのも同様で、選択モドキのインチキでしかありません。私も含め、教育する側がつい犯しがちな過ちですから、常に注意が必要です。
(続く)

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