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2008-10

小論文(論理的な文)とは何か(06.9.6改)

前回まで扱ってきた文芸作文では、書き手の思いや感情を読み手に伝えることが中心です。たとえば読書感想文では、書物に対する自分の感想を述べることで、自分がどのように感じ、考える人間かを読み手に語ります。

これに対し論理的な文とは、ひとことで言えば説得のための文です。ある課題やテーマに対して自分の意見とその根拠を述べ、自分の主張が正当であると読み手に納得させるのが目的です。「好き・嫌い」などの自分の感情に基づいて述べてははならず、全体に客観的でなければなりません。

たとえば「愛知万博」というテーマを与えられたとします。文芸作文では、愛知万博に実際に訪れて何を見たか、どんな行動をしたか、どう感じたかが中心になるでしょう。一方論理的な文では、「現代の日本にとって愛知万博は消費刺激策という経済的な意義しか無く、文化的な意義に乏しかった」などの意見、「博覧会において建造物は重要な位置を占めるが、愛知万博には大阪万博のような実験精神が見られなかった」などの根拠が中心になります。そしてどちらも客観的であることが必須です。

客観的の最たるものは数学の証明で、「A=B、B=C、よってA=C」と書かれれば誰もが納得せざるをえません。だからこそ古来より哲学者は、数学に匹敵する明瞭さで自分の論を展開しようと努力してきました。「思考する自己という存在」を基にして諸事を説明しようと試みたデカルトもそのひとりです。

しかし実際に論理的な文を書くとなると、内容が客観的に真か否か、多くの場合数学ほどはっきり区別できません。好き嫌いのような自分しか分からない感情は論外ですが、どのように書けば他人にも説得力があるか、迷うこともあるでしょう。

判断の基準は他人の視点です。客観的な説得力とは、視点の違う他人も納得させる力でもあります。自分と似たような立場や意見である仲間内だけでなく、立場も意見も異なる他人の目でどれだけ豊かに見られるか、がカギとなります。

上の「愛知万博」で言えば、地元経済界、中央の政治家、運営の責任者、環境問題に関わるグループ、建築家、地元の一般人、遠くからの訪問者など、実にさまざまな立場が存在しました。立場が異なれば、意見も大なり小なり違ってきます。それらすべての人たちに納得させるのは、実際にはほとんど不可能かもしれません。しかし自分とまったく違う他人の視点で見ればどのような判断にいたるか、これを推し測ろうとする努力によって、倫理的な文章は説得力を増していきます。

そのためにも、幅広い読書体験と人間関係の経験が論理的な文を書くためには重要です。

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